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聖書週間の様子と先生のお話

毎年、11月の1週間は聖書週間です。聖書週間には、朝礼時に宗教科の先生のお話を全校生徒で聴きます。今年はフランシスコ教皇の来日に合わせ、本校の聖書週間のテーマも「すべてのいのちを守るため」でした。聖書を開き、気持ちを落ち着けて過ごす朝のひとときは、生徒たちが自分自身や身の回りの環境・社会について考えるきっかけになりました。

~朝礼での先生のお話~

聖書の言葉 「ガラテヤの信徒への手紙 (3章26・28節)」

「あなたがたは皆、信仰により、キリスト・イエスに結ばれて神の子なのです。そこではもはや、ユダヤ人もギリシア人もなく、奴隷も自由な身分の者もなく、男も女もありません。あなたがたは皆、キリスト・イエスにおいて一つだからです。」
 みなさん、ごきげんよう。今日の聖書の言葉を一言でまとめると「キリストの名において、一つになろう」ということだと思います。皆さんが学級目標などで掲げる言葉だと「団結」とか「一致」または「協力」と言い換えることができるでしょうか。

 人が生きていく以上、良いことばかりが起こるわけはなく、時折、いろいろな困難にぶつかることは、ある意味当然だとも言えます。そんな中にあって、少しでも良い結果を残すために有効なのは、さまざまな考えを持つ人が一致団結し、「一つになること」ではないかなと思っています。「うまくいかないとき」「トラブルが起きたとき」、一人では解決できないことが、他者と協力することによって乗り越えることができた・・・という経験は誰にでもあるものではありませんか。

 先日、今年の流行語大賞 候補が発表されました。オジサンである私には「こんなの流行ったの?」と言いたくなるものも多かったのですが、「ラグビーに関連する言葉」が5つも入ったのは驚きを禁じえませんでした。ワールドカップが盛り上がっただけのことはあります。今回、初めてラグビーを見た人も多かったのではないでしょうか。

 さて、流行語大賞候補の一つに「ONE TEAM」という言葉が挙がっていました。「一つのチーム」になって頑張ろう、という意気込みを伝える言葉なのでしょうが、あたり前といえば、当たり前すぎる言葉でもあります。団体競技で勝利を目指すなら、一致団結するのは当然です。ラグビー日本代表チームは、なぜわざわざこんな標語を掲げたのでしょうか。よくある説明をするならば、「ラグビー日本代表31名の中には日本国籍を持つ日本人のみならず、韓国・トンガ・ニュージーランド・オーストラリア・サモア・南アフリカの合計7か国の選手がいる」からだといわれています。多国籍・多言語の選手が一つの目標に向かって頑張るために「一つのチームにまとまろう」という思いが「ONE TEAM」という言葉で表されているということでしょう。その結果、日本代表はベスト8という大きな目標を達成できたのだ、と。

 でも、私は「多国籍の選手がONE TEAM という標語でまとまることができた」なんて単純な話にしてはいけないと思っています。彼らが本当のONE TEAMになるまでには、お互いに不信感を持った時期もあり、口論もあったと聞いています。困難に立ち向かう時にだけ、目標を掲げ、「協力しよう、団結しよう」と言ってみても、口先だけではまとまりません。時間をかけて少しずつ、どんなに欠点があるように見える相手とでも、議論を重ね、お互いを尊重してじっくりとONE TEAMをつくる努力をしていく必要があるのです。

 教皇フランシスコは「すべての命を守るために」という標語を掲げて日本にいらっしゃいます。「すべての命」とは、私が大事にしたい命だけでなく、嫌いな人の命も、ホームレスの命も、障がいを持つ人の命も、犯罪者の命も大切にする必要がある、ということなのでしょう。どこかで線引きをして、「ここから向こうの命はいらない」と考えるのは「分断」です。「分断」があるとONE TEAMにはなれませんし、キリスト教で言うところの「愛ある状態」とは正反対になってしまいます。マザーテレサは「愛の反対は無関心だ」といいましたが、私は「無関心の前の段階に『分断』がある」と思っています。

 一見まとまって見えるクラスや部活動などの集団において、本当の意味での「ONE TEAM」を作り上げ、ワールドカップベスト8並みのつながりを作るために、本日の聖書の言葉「キリストの名において一つになる」ことを、意識してみてはいかがでしょうか。また、本当の意味で「すべて」の命を守ろうと思えるかどうか、自問自答してみることもおすすめします。教皇ミサに参加する人もそうでない人もぜひ、考えてみていただきたいと思います。