生徒より
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高校3年生 学園生活をふりかえって Vol.6

湘南白百合学園で過ごした六年という月日を卒業を間近に控えた今振り返って、私が特に懐かしく思い出されるのは高校二年生での最後の音楽コンクールです。
音楽コンクールとは本校で毎年六月に行われている合唱コンクールのようなもので全学年各クラスが自由曲と課題曲の二曲を歌い、中学の部、高校の部それぞれで一位から三位までの賞を目指して競い合います。私は音楽コンクールが年間行事の中でも特に好きで毎年楽しみにしていたのですが、私が高校二年生になった年に翌年からは高校三年生は自由曲に参加しないことが決まり、その年が私たちが自由曲を歌うことができる最後の年になってしまいました。
課題曲は二クラス合同で学年ごとに決められた聖歌を歌いますが、自由曲はクラスメイトや音楽の先生から出たいくつかの候補曲からクラスでの多数決によって決まります。私たちの高校生活最後の自由曲は三好達治の『鷗』になりました。音楽コンクールでは指揮者、ピアノ伴奏者共にクラスメイトから選ばれ、各パートのパートリーダーを中心に練習が進められていきます。初めはパート内で楽譜を見ながらひたすら音を合わせ、時に全体で音の調和を確認します。全体の歌が安定してくると、次はクラス全員で楽譜の記号を一つ一つ丁寧に確認し音の細やかな強弱や、それらと曲の歌詞に込められた意味を照らし合わせることで曲に深みを持たせていきます。
私が音楽コンクールを一番好きな行事に挙げる理由は、この行事を通じてクラスメイト同士の距離が格段に近づくからです。音楽の授業以外の朝、昼、放課後練習は先生から強制されたものではなく、全てクラスメイトの意志によって自主的に行われます。もちろん初めから全員が同じ熱量でいるわけではないため、時に練習への出席頻度の不満からパート内で揉めるようなこともあります。しかしコンクールが近づくにつれてお互いが妥協しあい、勝ち負けに無頓着だった子も次第に賞を目指すようになります。またそのような紆余曲折を経て徐々に高まる士気の中で、クラス替えからまだ間もないクラスメイトがクラス単位の勝敗のために団結していくのが、練習を積み重ねて変わっていく歌声とともに肌で感じられるのです。
コンクール本番、約四分余りの短い時間に私たちはそれまでのすべてを込めて歌います。暗い舞台上にスポットライトが一斉に当たる瞬間の高揚感や、座席で見つめるライバルたちを背に立つ指揮者と視線を通わせるときの安心感は努力してきたからこそ味わうことのできる特別な瞬間です。
私たちの最後の自由曲は同級生や高校三年の先輩方をおさえてなんと一位を獲ることができました。約四十人という他人同士がクラスという一つのチームになり、共に一つの目標に向かって切磋琢磨することそのものが学生のうちでなければなかなか得られない特別な経験ですが、その結果として最高の賞を勝ち取ったあの音楽コンクールは私の高校生活において忘れがたい思い出となりました。
最後に、湘南白百合学園での六年という歳月の中で先生方、同級生をはじめ多くの人たちに支えられて充実した日々を過ごし、また自分自身様々な経験を通じて大きく成長することができたように思います。私は卒業後法学の道に進みますが、この学園で出会ったすべてに感謝し自らの選んだ道を日々邁進していきたいと思います。