高校3年生 学園生活をふりかえって Vol.7
2020 年4月、東京・神奈川に緊急事態宣言が発令。私の湘南白百合最後の 1 年は、コロナウイルスと共に幕を開けました。心血を注いで励んだ行事が軒並み中止になったことを惜しみつつ、私が最も恋しかったのは、何よりも教室で受ける授業でした。湘南白百合学園の中高はすぐにオンライン授業を導入したため、学習進度に影響はあまりありませんでした。しかし対面授業のあの熱気、友人との意見交換、どれも懐かしくてたまらず、特に世界史の授業を思い出しては早く学校に行きたいと願っていました。
世界史は高 1 では文系理系共通の授業でしたが、私は理系に進みたいと考えていたのであまり興味がなく、1 年の辛抱という気持ちで当初臨んでいました。しかし高 1 の年度末、私は考えを翻して高 2 でも世界史の授業を選択することにしました。そうして今では世界史が一番好きな授業といえるようになったのは、ひとえに先生のおかげだったと思います。
授業中のみならずメールでの質問に対しても迅速かつ詳細な解説対応や、朝や放課後、さらには長期休み中に行われる希望者を対象とした補講の開講など、先生は私たちが学習しやすいように環境を整えてくださいました。その熱意と、偉人に関する小話の面白さの影響で、高 2 のころになると私は先生の私物の神聖ローマ帝国に関する本をお借りしたり、友人とともに国立西洋美術館に赴いてハプスブルク展を堪能したり、世界史にどんどんはまり込んでいきました。そして大学の試験課題でも、授業で扱った中国史をメインに据えた小論文を書こうと決め、毎日のようにお昼休みを丸々使って先生に相談に乗っていただき、満足のいく論文を仕上げることができました。先生には本当に感謝でいっぱいです。
なかでも一番感謝していることは、「きっかけ」をたくさん得られるようにしてくださったことです。授業はあらかじめ配られたプリントと先生のパワーポイントで進みますが、そのパワーポイントは Google Earth を使った航空映像や多くの肖像画、時には先生自身が撮影した遺跡の写真などをふんだんに使い、少しでも興味を持てるように工夫が凝らされていました。今の時代、たくさんの解説本やインターネットのおかげで詳しい情報を得ることは簡単です。けれど情報があふれているその分だけ、興味がない分野には手を出さずとも満足できてしまい、私の世界は狭いものでした。戦略や経済、農業の方法に至るまで細かく解説してくださったり、はたまた授業中に映画を見たり、いろんな分野への足掛かりをちりばめた先生の授業がなければ、私は絶対に世界史に興味をもつことはなかったと思います。
世界史に限らず、ほかの授業も多くのきっかけを与えてくれるものでした。現代文の授業がなければ茨木のり子の詩に感動することはなかったでしょうし、現代社会の先生が抜き打ちで時事ニュースを聞いてくることがなければ、いまだスタグフレーションなどという言葉は知らなかったでしょう。今になると、受けてきた授業すべてが自分の基礎を形作ってくれたと感じています。
私は 4 月から法学部へと進学します。法律は科学や農業などさまざまな分野と関わり合いがあり、法律を学ぶことは世界史の授業と同じように私にまた「きっかけ」を与えてくれると思います。心を砕いて授業をしてくださった先生方の教えと感謝を胸に、力を尽くしてまいります。